官僚、公務員の特権と改革の本、関連書籍、評論の紹介,評価,安売り価格

市役所は「市」民の「役」に立つ「所」　評価：

これは，公務員批判の本ではない。
現役の千葉市長が書いた，地方行政の最前線を見つめた内容となっている。
昨今の異常なまでの公務員批判の背景を客観的に分析し，市長として市役所の職員たちとともに取り組んできた改革について熱く語っている。
市役所は，「市」民の「役」に立つ「所」でなければならないとする筆者の主張は極めてまともである。
そして，「市長だけが独断するのではなく，職員を巻き込むこと」，「住民に対する説明責任を果たすこと」，「究極の地方分権とは，住民が直接市政に参加すること」を説いている。
思うに筆者は，今のマスコミが大々的に取り上げる一部のカリスマ的首長ではないが，市民と謙虚に向き合い，共に歩んでいこうとする誠実で腰の低い人であることが想像できる。

行政ITを中心として問題点に対する答えが載っている　評価：

大変実業務に参考になる内容です。
特に第二章「調達・委託の改革」は日本の行政IT関連調達への問題提起ではなく、具体的な解決策が提言されており、第四章「ITコストの削減」は誰も触れなかった現況を客観的に分析した上であるべき姿を提言していて、実のある内容と感じました。

紀州対尾張、重農主義対重商主義、朝廷対幕府　評価：

綱吉時代のおさらいに続いて、家宣・家継期の新井白石の正徳の治、吉宗の享保の改革、家重・家治期の田沼政治、寛政の改革、そして松平定信が失脚するまでの経済政策を含む政治史の巻。
３つの切り口で小気味よく論旨が展開される。
まず紀州対尾張の血脈争い。
紀州を贔屓にした綱吉、尾張を贔屓にした家宣。
それなのに紀州・吉宗が８代将軍になった謎。
吉宗に逆らった尾張宗春。
尾張家が将軍になる可能性を徹底的につぶすために吉宗が仕掛けた御三卿の仕組み。
その中から一橋家の血の独占を図った怪物・治斉が登場。
定信が将軍になる可能性をつぶし、一転その田沼追い落としに協力し、あげく失脚にも影を落とす。

田沼意次と松平定信との壮絶な争いの陰の仕掛け人　評価：

一人の著者によって長年に亘り書き継がれてきた『逆説の日本史』は、歴史の通説に異論を唱えるその姿勢が人気のシリーズであるが、『逆説の日本史（第15巻）――近世改革編官僚政治と吉宗の謎』（井沢元彦著、小学館）には驚くべきことが書かれている。
「一昔前までは田沼意次といえば『希代のワル』『諸悪の根源』『悪徳政治家の象徴』『賄賂の帝王』として、一般には認識されていた」が、不倶戴天の敵・松平定信の保守的政権と比較して、田沼政権は革新的政権であったという肯定的な評価が定着しつつあるというのだ。

暗君と名君をわけるもの　評価：

シリーズ15巻は、吉宗とその経済政策についてです。
吉宗と言えば、「暴れん坊将軍」（もちろんフィクションですが）で有名ですが、世間の相場はどちらかと言えば、「名君」に偏っていると思います。
もちろん、彼が暗君であったとは言えませんが、こと経済政策については、「素人以下」であり、そこで同じ徳川家の中で、「政争」とも言える争いがあったことなどは、歴史の教科書に載っていません。